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「切られお富」

恒例の前進座初春公演とあって,妻と南座へ。今年の演目は黙阿弥の「処女翫浮名横櫛」,通称「切られお富」。
子供の頃にラジオから流れていた春日八郎の歌「お富さん」の元になった「切られ与三郎」が本歌とすれば,これは本歌取りとでも言うべきだろう,切られるのは与三郎でなくお富だ。あまり上演されない演目のようだが,「書換え狂言としては傑作中の傑作」という評もあるようだ。
ゆったりとした休憩も含めて4時間近くの舞台だったが,お富役の国太郎が光っていた。だが,観終わっていくつか釈然としない点が残ったことも事実だ。そして,それら気がかりなことをたどっていくと,今回の前進座の舞台の終盤が,強請りとった二百両(相変わらず「切り餅」二つの五十両にしか見えないのだが)を奪いあってのお富と安蔵との畜生塚での立ち廻りに置かれていることに関わっているように思う。傘で防ぐ安蔵をお富は出刃をかざして追いまわし,ついには殺して金を取り返すのだが,そこへ都合よく現れた与三郎にその金を渡して先に行かせ,自分は夫殺しの身の上からにはと自害をほのめかして見得を切ったところで幕となってしまう。これでは,まるで生殺しの状態に放り出されたようなものだ。何とも落ち着かない気分にさせられる。
本来はその後に,お富の父である按摩の丈賀の説明もあって,与三郎がお富の実の兄であることが判明し,自分たちの犯した近親相姦の罪に恐れおののいて二人揃って自害となるはずで,そこで初めてこの場が狐ヶ崎の「畜生塚」であることの意味が判然とし,物語全体の因縁話としての完結があるように思うのだが。不思議な演出だ。
その後の三条のホテルでの懇親会の席でも,しかしこの点は梅之助氏には尋ねなかった。いま一つ自分の考えが整理できていなかったことと,そうでなくとも疲れ切っているかに見えた梅之助氏につまらない質問をするものではない,と妻に釘をさされていたこともあって。

ともあれ,正月気分はこれでお終い。まだ後期セメスターの途中で,3回分の授業も残っているし,その後には入学試験期の独特の繁忙期が控えている。

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Comments

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