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犯罪者が自らを語るとき

半月ほどの間,通勤の鞄の中に入れて持ち歩いた小倉孝誠・著『犯罪者の自伝を読む ─ ピエール・リヴィエールから永山則夫まで ― 』(平凡社新書)だが,いろいろと教えられるところがあった。
中心になっているのは第二帝政期のフランスの犯罪者達が自己と自己の犯罪について書いた文章だが,末尾にはルイ・アルチュセールおよび永山則夫のそれについても採り上げられている。だが,学生諸君に勧めても,おそらくは不評だろうなと思う。本書には,それら犯罪者のおぞましい犯行の詳細や,犯罪社会の特徴の描写があるわけではないからだ。著者の関心は,むしろ,犯罪者が自らを語るという特異な行為がなされることの意味を探ろうとするところにある。

僕にとって興味深かったのは,これら「自伝」の内容もさることながら,むしろそれらが社会に明らかとなり,後世に残った理由だ。
重大な犯罪を犯した者は,当時の法制の下では間違いなく極刑に処されるだろうことを覚悟した上で,自己の有能さと度胸を誇示し,刑事制度の無能を嘲笑して,法廷を見世物にしようとし,またそれを(多くは裁判記録として)文章にした。あるいは,悔悟した犯罪者による「回想記」のような形で,社会を啓発する目的でそれが書かれたこともあったが。
だが,「自伝」の組織的な記録と収集がなされるのは19世紀後半以降,一群の犯罪学者による作業によるところが大きいということだ。つまり,最初はロンブローゾによって,次いでラカッサーニュが,研究手法として囚人に自己を語らせることを始め,それによって犯罪者の生物学的な特異性を明らかにし,あるいは犯罪の背後にある社会環境的な諸問題を証明しようとしたのだ。
面白いのは,このイタリアとフランスの,学説史的には相対立してとらえられることの多い二人の犯罪学者が,同じ時期に競って犯罪者の「自伝」の収集と解読に熱中したという事実だろう。
だが,アルチュセールの事件とのかかわりで短く触れられている「パリ人肉事件」の佐川一政に典型的なような,メディアへの売り込みという目的で「自伝」が書かれるような現象は,それらとは異なる,醜悪なだけの現代的エピソードだ。

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Comments

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