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本人の意思を確認せず臓器摘出

報道によれば,昨日,本人の書面での意思表示がないケースで初めて,交通事故で脳死状態となった男性から臓器の摘出が行われたとのことだ。もちろん,家族の承諾のみで臓器の摘出を可能とした昨年の臓器移植法改正をうけたもので,今後このようなケースは増えていくのだろう。
これでやっと先進国の標準・WHOの推奨基準に近づいた,とこれを歓迎する声も大きい。本人あるいは近親者が難病に罹っていて,臓器移植によってしか助からない人々は確かにおり,とりわけ幼少者については従来の基準では適当な臓器を得られる見込みがなかったことでもあり,今回の法改正が事態を好転させるだろうと期待されているのだ。
だが,僕はそのような意見に共感しない。人の生命は神の意思にのみ委ねられており,人が勝手に左右すべきではない,とか,他人の生命を奪って生きるなどは倫理的に許されることではない,といった意見に今さら与しようとは思わないが,ここにはもっと世俗的な障害物が隠されているように思うのだ。
この,脳死判定から臓器摘出,移植へというプロセスには,何かいかがわしいものがある。
誰が臓器を提供し,誰がそれを受け取るのか。その「誰か」を決めているのは誰なのか,何を根拠としてなのか。
我われの世界では医療は無料ではない。今さら言うまでもなく,臓器移植は非常に高度な医療であり,設備が整った病院ですぐれた技術を持った医療チームが担当しない限り成功することはありえず,手術が終わった後も,拒絶反応や感染症を防ぐために免疫抑制剤の投与をはじめ細心の管理が必要とされる。であれば,現実にその種の手術や治療を受けることができるのは,相応の資力を持った人々だけだということになる。
東南アジアの国々には日本や欧米諸国の患者のために腎臓などの臓器を売った人が相当数いることが知られているが,ここにある図式は見間違えようのないものだ。貧しい人々が豊かな人々に臓器を提供しているのであり,その逆ではない。このことを無視して,「善意の臓器によって救われた命」ばかりを強調するメディアの合唱には,どうしても違和感が残る。以前書いたこともあるように,臓器売買は時にわが国でも問題になることがある。
僕が「いかがわしい」と言ったのは,まずはこのこと。誰もが知っているはずのこの簡単な事実を,なぜ誰も指摘しないのだろうか。──はるか昔の刑法学会で,脳死判定・臓器移植を推進すべきとするIt.教授の報告に対して,フロアから一人昂然と立って,「だが医療は只ではない」として引き下がられなかったIn.先生の姿を思い出すことだ。
「死は平等」という,既にその真実味にかげりを生じている言葉だが,やはり僕は,その平等にこだわりたいと思う。

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Comments

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