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大学教員というもの

あいにくの炎暑の一日の余韻を引きずった鴨川の床で,学生時代からの友人と。心ばかりの川風もあって,段々に暮れてゆく対岸の風景や東山の稜線をたどりながら,ゆっくりと杯を重ねた。まさに,京都に暮らしていることの幸運を思った一夕だった。
そのあとも色々あっての帰途,先ほどまでの会話の反動でか,つまらないさまざまなことを考えた。
そのひとつは,今日のわが国での大学教員という存在の特殊性だ。

戦前から戦後へ,その「社会的ステータス」において最大の下落をこうむったのが大学教員だという所説を以前目にした記憶があるが,そのステータスが社会的な権威や賃金収入を意味しているのであれば,それは本当だろう。だが,多くの点で大学教員自身の特権意識は変わっていない。1970年を前後した時期の「学園紛争」あるいは「民主化闘争」にもかかわらず,わが国の主要な大学では,伝統的な教職員関係とそれに対応した大学教員の,教育者などではなく「研究者」なのだという自己規定も,教授会というギルドの特権を押し立てての教育の自由の勝手な解釈も,つまりは大学の戦前的なものはほとんど傷つけられずに残ったというべきだろう。
例えば東京大学の「確認書」にしたところで,他の多くの大学での「民主化」にしたところで,それを血肉としての大学の体質の改革はその後一向に実質化せずに終わったというべきだろう。教員の自由なギルドとしての大学── カリキュラム体系も授業方法も,職員や学生の地位も,ほとんど手をつけられることなく,残った。

この間のもっとも大きな変化は,国公立大学の「独立行政法人化」による外からの改革によるもので,内側からのそれはどこであれ成功していない。いくつかの「民主化」の進んだととされる大学での,学生をも含めた全学構成員による自治の高唱や「教職共同」のスローガン,マスプロ教育を否定しての「小集団」での教育の実質化の試みなどなど。それらは,はたしてどこまで実質化し成功したことだろうか。大学教員として大学の内部に身を置いている立場からは,かえって足りない点ばかりが目について,心苦しいことだ。
そして,多くの局面で,声高な「教学優先」と「学部自治」の名分とが,かえって大学自身の多様で積極的な教学の展開を,つまりは学生に対する充実した教育というサービスの徹底を,阻害しているように思われてならない。

では,この閉塞的な状況からどのようにして脱出するか。
この点での僕の見方は,かなり悲観的なものだ。現在の大学教員自身に,その居心地のよい現状を根底から覆すこととなるの見直しや「改革」の推進を期待することは難しいだろう。しかし同時に,こんな状況がそれほど長く続くとも思わない。つまり,何よりも,国際的な高等教育情勢とそのわが国への波及によって,無理やりにでも事態は変えられていくだろうと予想するのだ。またしても,「外圧」によってしか問題を解決することはできないのかと,一面,暗然とした思いにとらわれるが,しかし,それが ─ 大学をも含めた ─ わが国の運命なのかもしれない。
エラスムス計画からボローニャ・プロセスというヨーロッパでの重要な動きはアメリカを含む「高等教育の質保証」と「平準化・共通化」の動きとして,遅かれ早かれ中国を飲み込み,日本へと押し寄せるにちがいない。そのときには,教員に成りきれない教員による教育の独占という,わが国のガラパゴス状態が揺らぐことは必然だろう。

──酔った頭でたどった切れぎれな思考だが,おそらくはそれほど間違っていないだろう。大学教員生活の終わりに近づいてしかこれらのことに思い至らなかったことが,残念だが。

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