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破滅のマヤコフスキー

亀山郁夫先生の講演「ウラジーミル・マヤコフスキーとロシア・アヴァンギャルドの運命」を聴くために,電車とバスとを乗り継いで滋賀県立近代美術館へ。
穏やかな語り口で先生の話されるには,東京外大の修士課程で最初に取り上げた研究テーマがマヤコフスキーだったが,1年かけてその作品を読み込んでいる途中で水野 忠夫先生の『マヤコフスキイ・ノート』が刊行され,これはだめだ,とても太刀打ちできないと研究対象をフレーブニコフに変えたのだそうだ。思わず,それはわかるなと胸の内でつぶやいたことだった:たしかにあの『ノート』は,その量でも内容でも,圧倒的な迫力を持つ研究だった。

それにしても,この僕はどうしてマヤコフスキーにあれほど強く惹かれたのだろうか。
はるか昔,郷里の駅前の書店の棚に並んだ小笠原豊樹訳の『マヤコフスキー選集』を見つけ,橙色のケースに入った3冊本の,かなり高価だったその一冊づつを何ヶ月かかけて順次買い求めたのだった。収録された全ての訳詩も,関根弘氏の解説も,何遍となく読み返した。大学に入ったらロシア語を勉強しよう,という決意の一つのきっかけはこのあたりであったろうか。
法学部の学生となった後も,機会を見てはマヤコフスキーの作品や彼に関する評論などに目を通し,無謀にもロシア語版の選集を手に入れて読み通そうとしたこともあった。自分の専門の勉強が忙しくなり,考えなくてはならないことも色々と増えて,徐々にマヤコフスキーは僕の関心の中心から外れていったのだが,長い時間の後から考えてみれば,あの当時何が僕を彼にあれほど引きつけていたのか,むしろ不思議だ。

亀山先生の講演を聴いていてとくに印象に残ったのは,「仮面」の仮説だ。
このことについては,先生の『破滅のマヤコフスキー』に詳しいし,革命との関係,正教会との関係それぞれに検討され論じられていることだが,今日の会場でそのことを聴きながら思い当ったことがある:それは,彼が「僕の革命」と呼んだにもかかわらず,革命や労働者のことを書くときの極めて形式的で抽象的な詩句のことだ。そこには,「背骨のフリュート」や「これについて」の場合のような,切羽詰まった感情の表出のようなものがうかがえない。言葉が上滑りしている。その事実を,かつての僕はマヤコフスキーの,詩人の仕事を労働者のそれになぞらえるようなレトリックや,プロパガンダのための「スローガンが必要だ」という言葉で説明されたかのような気がしていたのだが。

結局,何も分かっていなかったということなのだろうか,当時の僕には。
だが,それでも僕には,多くのマヤコフスキーの詩句や講演内容,写真の端々に滲んでいるのは,亀山先生が言うような傲慢・不遜さであるよりは,何かのきっかけがあれば溢れ出すに相違ない気の弱さや不安であるように思われるのだ。

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Comments

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